次元正則化
次元正則化についてしばらく悩んでいる.
場の量子論では,意味ある計算結果を導こうとすると無限大に発散する値があらわれることがしばしばある.
このために,無限大を上手くコントロールしなくてはいけない.典型的によく現れるのが下のような積分.
は4次元ベクトル.これを4次元空間全域で積分すると収束しない.しかし,この積分がもし3次元以下だったら収束することに気づく.この積分を4次元から次元に一般化する.
被積分関数はベクトルの大きさにしか依らないから,次元空間で回転対称であることがわかる次元単位球面の体積がであることを用いると,先の積分は,
と計算できる.このあとは,ガンマ関数やらベータ関数の知識を用いると,
と計算できるのだ.ここまではただの算数.最初から最後まで問題がないのは,もちろんのとき.
式だけをみると,あたかも計算結果が次元の関数になっているように見える.ので,ここからを複素数だと思うことにして,積分ができなかった領域にも解析接続すればいいじゃん.というのが次元正則化.実にクレイジーだ.
ガンマ関数は0,-1,-2,…に極を持つ(発散する)ことが知られている.を4に近づけていくと,極があることが分かる.すなわち,積分の発散が複素関数の極として再現されているということだ.
ここで疑問が.
たしかに,d=4,6,8,…では極を持つが,d=5,7,9,…ではきちんと値を持ってしまう.しかし,
や,は明らかに発散するし,
さらにいえば,d=5,9,…では値が負になってしまう.
これは結局,もともと積分が収束しなかった領域に解析接続していったから,ということになるのだろうか.
が積分できるのは,Re<4の時だけだから,この領域での振舞いしか信用できない気もしてくる.