外場の処方

回転に対応する保存量は全角運動量であるから,スピン角運動量や軌道角運動量は厳密な保存量ではない.
ただ,低エネルギーではスピンはただの内部量子数のようにふるまい,スピンや軌道角運動量が良い量子数として使えるようだ.


\hbar=c=1とおくと水素原子のシュレーディンガー方程式は,(-\frac{1}{2m}\nabla^2 - \frac{\alpha}{r})\psi = E\psi
角運動量固有状態を採用し,\psi = \frac{1}{r}\chi(r) Y_l^m(\theta,\varphi)と関数をとると,(\frac{d^2}{dr^2} - \frac{l(l+1)}{r^2} + \frac{2m\alpha}{r} - 2mE )\chi = 0
\chi = r^\beta \sum_{k=0}^\infty c_k r^kとベキ展開して微分方程式に代入すると,
原点付近のふるまいから\beta=l+1が決まる.

また,微分方程式無限遠でのふるまいから,\chi \propto e^{-\lambda r} (\lambda = \sqrt{2mE})がわかる.よって,\chi = r^{l+1} e^{-\lambda r} f(r)とおき,f(r)がk次式であるという条件を課すと,E=\frac{m\alpha^2}{2(l+k+1)^2}が導かれる.

これは非相対論的な場合.相対論を考慮する場合はDirac方程式を解かなければいけない.
この場合も本質的には同じ操作をする.計算の煩雑さは飛躍的に上昇するが.
頑張って計算すると,E= m ( 1+( \frac{Z\alpha}{ n + \sqrt{ (j+1/2)^2 - (Z\alpha)^2 } } )^2 )^{-1/2} = m( 1 - \frac{1}{2}\frac{(Z\alpha)^2}{n^2} + \frac{(Z\alpha)^4}{n^4}(\frac{3}{8} - \frac{1}{2j+1}) + \cdots)が導かれる.微細構造を読み取ることができる.