BRST対称性
ローレンツ共変なゲージでゲージ理論を量子化しようとすると負ノルムの状態があらわれてしまって困る.
このような状態があらわれてしまうと,遷移振幅を遷移確率と解釈することができなくなってしまう.
ということで,このような非物理的状態はあらわれないことをいいたい.
まず,ハミルトニアンがエルミートであるとする.
さらに,BRST対称性,すなわちベキゼロの保存量があることを要求する.
ハミルトニアンがエルミートであることから,S行列はユニタリであることが分かる.
始状態や終状態は,保存量の線形表現であることが知られている.Qは冪ゼロなので,既約表現は1重項と2重項のみである.
1重項はをみたし,とは書けないものである.
2重項はで張られる.ただし,.この時,であることがすぐ分かる.内積を持つ状態が少なくともひとつはあるはずなので,とする.
このとき,を定義できて,であることがわかる.
このようにして,2重項は必ずペアを作っていることがわかる.これはBRST4重項と呼ばれる.
全状態空間に対し,物理的状態空間をで定義する.
このとき,であることから,が分かり,は遷移で不変である.
の作用によりから状態がはみ出ないので,上にの作用を限った演算子を定義できる.
このとき,のユニタリ性より,もユニタリ.
には,BRST1重項に属する状態と4重項に属する状態がある.
BRST1重項は物理的なものに対応するので,ノルムの正定値性を仮定する.
この時,4重項の状態はノルムが0の状態でしか現れないことがBRST不変性より示される.
つまり,は半正定値性をみたす.
零ノルムの部分空間を定義する.
から,だから,が分かり,もの作用で不変.
よって,零ノルム部分を潰したの上でS行列が矛盾無く定義でき,さらにユニタリであることが分かる.