5章のおおまかなストーリー

非可換ゲージ対称性を持ったラグランジアンで,経路積分により量子化しようとすると,
U(1)ゲージのときには無かった余分な項があらわれる.これは,FPゴーストと呼ばれる粒子の効果と解釈することができる.
FPゴーストは,スカラー粒子だがフェルミオンである.このため,この自由度は非物理的なものである.


非可換ゲージ場の理論は,BRST対称性を要求することで構築することができる.
BRST対称性をもったラグランジアンの登場人物は,物質場,ゲージ場,FPゴースト,反ゴースト,NL場である.
この時,ゲージ場の縦波成分,スカラー成分,ゴースト,反ゴースト,NL場は非物理的な自由度である.NL場はゲージ場のスカラー成分に対応することが計算により示されるので,非物理的な自由度は実際は4種類だ.
非物理的な粒子は,ノルムが0になったり負になったりするので,あらわれてほしくない.
このラグランジアンは,BRST変換の生成子であるBRST電荷,ゴースト数を保存量として持つ.


ヒルベルト空間全体を考えると非物理的な状態が含まれるから,物理的な状態を指定する条件を考えなければいけない.
物理的な状態はBRST不変なものであると考える.つまり,BRST電荷Q_Bを使って書けば,Q_B|phys>=0ということだ.


この対称性から,n点グリーン関数すなわちS行列に対しても対称性が存在することが分かり,一連の恒等式があることが分かる.
この恒等式はWard-高橋恒等式と呼ばれるものであるが,これを使うと,Q_B|phys>=0のなかに,非物理的粒子が負ノルムになるような組み合わせであらわれることはなく,
常に0ノルムであらわれることが示される.S行列の行列要素は内積であるから,0ノルムの要素は影響を与えない.